
旭食品株式会社とは?
旭食品株式会社(以下、旭食品)は、総合食品卸売企業として高知県南国市に本社を構える会社です。全国のメーカーから多彩な食品を仕入れ、スーパーやコンビニ、ドラッグストアなどへ届ける役割を担っています。
取扱商品は加工・冷凍・チルド食品、菓子、お酒、雑貨などと幅広く、約21万アイテムにのぼります。単に商品を流通させるだけでなく、売り場提案や販促イベントの企画、地域の食文化を活かした商品開発にも力を入れており、「食」を通じて地域の暮らしを支える存在です。

「人を育て、人が育つ会社へ」
——旭食品 高知支店・山本和正支店長インタビュー
「支店長の仕事は、売上だけを追いかける訳ではありません。従業員一人ひとりが力を発揮できる環境を整えること、それが一番の役割だと思っています」
そう穏やかな口調で話すのは、高知支店の山本和正支店長。
長年、営業の現場で数多くの経験を積み、その後マネジメントの道へ。今は支店全体を見渡しながら、営業活動はもちろん、社員の働きやすさややりがいづくりにも力を注いでいます。現場と経営の両方を理解する山本支店長だからこそ、言葉に重みがあります。
支店長としての視点
日々大切にしているのは、「数字」と「人」、両方をバランスよく見ること。
「売上や利益は大事ですが、そればかり優先すると、現場の士気や働きやすさが犠牲になることがあります。そうなると、長期的な成果は期待できません。だからこそ、困っている従業員や悩んでいる従業員がいれば必ず声をかけるようにしています」
その声かけは、堅苦しい面談だけではなく、日常の雑談やちょっとしたやり取りの中でも行っているそうです。
「会議で意見を引き出すことも大事ですが、休憩時間や廊下ですれ違ったときなどに何気なく話すほうが、従業員の本音を聞けることもあります」
高知支店では、部署や年齢を超えた交流が自然と生まれるような雰囲気があります。これは支店長が「話しやすい支店長」でありたいと意識してきた結果でもあり、支店全体の信頼関係を下支えしていると感じました。
人材育成への思い
支店長が特に力を注いでいるのは、若手社員の育成。
「若い社員には、できるだけ多くの挑戦をしてほしい。もちろん失敗することもあるでしょう。しかし、失敗を恐れて挑戦しないことのほうが、もったいないことなのです」
旭食品では、入社間もない従業員でも、展示会の企画や新商品の提案、イベント運営など大きな役割を任される機会があります。支店長は、「まずはやってみろ」と背中を押すそうです。
支店長自身も若手時代、先輩や上司から多くの挑戦の場を与えられ、その中で営業スキルや人脈を築いてきました。そういった経験があるからこそ、今度は自分が同じように、若い世代の背中を押してあげられる喜びを感じています。
社内の研修は、従業員が成長するための強い味方になっているといいます。「知識やスキルはもちろん大事ですが、それ以上に挑戦する気持ちを持ち続けることを大切にしてほしい」と語ってくれました。

商品開発で見せる「即行動」の姿勢
支店長の仕事ぶりを象徴するのが、取引先から「こんな商品を作れないか」と相談を受けたときの対応です。相談されると、その場から社内の開発担当に連絡を入れ、試作の段取りを決定。翌日には売り場を訪れ、陳列位置やパッケージ案を確認し、数日後には試作品を届けて、その反応を直接ヒアリングしました。こうしたスピード感が信頼につながり、その商品は短期間で市場投入されました。
「現場の熱量は時間が経つと冷めるので、すぐに動くことが大事なんです」と支店長はいいます。
このお話からも、機会を逃さない素早い行動が成果につながることがわかります。
日常から築く信頼の習慣
一方で、支店長は「信頼は一朝一夕では築けない」とも語ります。取引先との関係は、日々の小さな積み重ねによって強まるもの。打ち合わせでは商品の説明や条件交渉だけでなく、地域や店舗の近況、担当者の最近の出来事にも耳を傾けます。
「お願い事をするときも、普段から相手を気にかけているかどうかで、返ってくる反応は変わります」
こうした何気ない会話や気遣いが、相手の信頼を深め、結果的に商品開発や営業活動を円滑に進める土台となっているのです。即行動は、日常的な信頼づくりなのだと感じました。

これからの高知支店
最後に、今後の高知支店の方向性について伺いました。
「これからは時代の変化に合わせて、業務の効率化やデジタル化をさらに進めたいと考えています。しかし、どんなに便利なシステムを導入しても、人と人との信頼関係があってこそ仕事が成り立つ訳で、そこは変わらないし、守っていきたいですね」
支店長の言葉には、数字や仕組みだけでは測れない「人の力」を信じる強い思いが込められていました。支店長としての責任を背負いながらも、社員の成長や挑戦を心から応援する姿勢が印象的でした。

信頼を築く、一歩ずつのあたたかい努力
——旭食品 高知支店・赤井彩夏さんインタビュー
「大学生の時は『高知には何もない』と思っていました。でも、帰ってきたら、なんだか落ち着く場所になっていたのです」
そう語ったのは、旭食品 高知支店に勤める赤井さん。学生時代を大阪で過ごし、就職を機にUターン。現在は営業の第一線で活躍されています。
食に関わる仕事がしたい——地元で働く決意
大学では地域活性化をテーマにしたゼミに所属し、地元の魅力や課題に向き合うなかで「いずれは高知に帰って働きたい」という気持ちが強くなり、就職活動では県外の企業ではなく、高知でのキャリア形成を前提に企業を選んだそうです。
その中でも「食品卸」という業種に惹かれた理由は、メーカーとも小売とも違う、「つなぐ役割」に興味をもったからだと言います。
「営業職に興味はありましたが、『卸の営業は何をするのか』正直よく分かっていませんでした。でも実際にやってみたら、メーカー・スーパー・お客様、三者の間で企画をつくったり提案したりと、思っていた以上に面白いものでした」
現在はお酒の営業を担当し、得意先のスーパーの店頭に自分の提案した商品が並ぶことに、やりがいを感じているそうです。
信頼を得るまでの“あたたかい努力”
現在活躍されている赤井さんですが、最初からうまくできたわけではありません。
「得意先を引き継いだばかりの頃は、前任の方と比べられることも多くありました。問い合わせの電話もたくさんいただきましたし、正直失敗もたくさんありました」
そんな中でも赤井さんは、一つひとつの行動を丁寧に積み重ねてきました。毎週欠かさず店舗に足を運び、返事は「できること・できないこと」をはっきり伝える。そして、レスポンスはなるべく早くする。相手に安心してもらえるよう、地道に信頼関係を築いていったといいます。
「最初は、『赤井さん、大丈夫』って心配されることばかりだったのですが、ある時『これお願いしてもいい?』と頼ってもらえた瞬間がありましたりました。その時は、本当にうれしかったです」
信頼を得るには時間がかかりますが、丁寧な姿勢はきっと伝わる。赤井さんの言葉から、そんなあたたかい想いがにじんでいました。

「おせっかいなくらい親切な人」が集う職場
高知支店について話を聞くと、真っ先に返ってきたのが「人があったかい」という言葉。
「おせっかいなくらい、みんなが助けてくれます。本当に困ったときは誰に聞いても『自分でしなさい』とは言われません。むしろ、『他の部署の人でもいいから、この人に聞いてみなさい』と背中を押してくれます」
また、若手にも海外の展示商談会での販売活動など、大きなチャンスを与えてもらえる環境があり、挑戦できる機会が多いのも魅力だといいます。
働きやすさと、これからの課題
働きやすさは制度にも表れています。旭食品では、休暇制度や育休・産休制度が年々良くなっており、たとえば育児時短勤務は子どもが小学校卒業するまで利用可能だったり、介護相談窓口やカウンセリング室も新設され、ライフステージの変化にも柔軟に対応できる体制が整っていたりします。
一方で、改善すべき点もあるようです。
「デジタル化や業務効率化は全社的に取り組んでいますが、まだまだアナログな部分が多くて現場は大変です。だからこそ、若手の私たちも声を挙げて改善に関わりたいですね」
旭食品の働き方改革は現在進行中とのことで、現場の皆さんも一緒になってより良い職場にする取り組みをしています。
「自分ならできる」を信じて
赤井さんが今後も大切にしたいのは「前向きにやってみる姿勢」ということです。
「失敗もあるけれど、『次はこうしてみよう』と思えるようになりました。今は、売上を作ることも大切ですが、『得意先にとって意味のある提案なのか』を第一に考えるようにしています」
単に商品を売るのではなく、「お得意先と一緒に考え、提案し、売り場をつくる」ことが赤井さんの営業スタイルです。
最後に、就活を控えた大学生に向けてこんなメッセージをいただきました。
「入社前は、会社のことも人のことも何も分からず、不安だらけでした。でも、考えている以上に人は優しいし、あたたかいのです。ですからあまり身構えずに『自分の得意』を大切に進んでほしいです」
地元で働くこと。営業として信頼を積み重ねること。会社の未来に自分の力で関わっていくこと。赤井さんの姿からは、「成長する楽しさ」と「人と支え合い働く大切さ」が伝わってきました。

働きやすさが、挑戦を後押しする
——旭食品 本社 管理統括本部 人事部・濵﨑輝部長インタビュー
「やっぱり、人が大事なのです」
そう話すのは人事部の濵﨑輝部長。
働き方改革や福利厚生のこと、そして若手社員やこれから入社してくる人たちへの想いまで取材中は何度も「人」という言葉が出てきました。
学生の私から見ても、福利厚生に関する手当てや休日数は“数字”として目に入りやすい部分です。しかし、濵﨑部長が話してくれたのは、それだけではわからない「制度の背景」にある考え方でした。それは、ただ処遇面を良くするためではなく、社員が自分らしく力を発揮できる職場をつくるための仕組みです。
有給休暇が“取りやすい”だけじゃない制度づくり
旭食品では、中期経営計画「ACE2030」で、年間休日数の増加を目標に掲げています。
「2018年から少しずつ有給休暇を増やしてきたのですが、2025年度に目標にしてきた日数を達成しました」と、濵﨑部長は笑顔で教えてくれました。有給休暇は1時間単位から取得できるということです。
「ペットの通院や家族の介護、歯医者や薬の受け取りなど、半日も休むほどではないけど時間が必要なときにちょうど良いのです」
たしかに、学生の私から見ても、この柔軟さは働く人にとって心強いと感じます。
さらに健康診断・二次健診の費用補助や勤続年数ごとの特別休暇と祝い金など、日常に寄り添った福利厚生も整っていました。
「通常の会社は半年後から有給休暇が付与されるのですが、すぐに必要となる場合を考慮して、旭食品では入社初日から有給休暇10日を付与しています」
このように従業員に発生する問題自体への対応も考え、制度が作られています。
「自分で考えて動ける人」と一緒に働きたい
新卒や若手従業員に求めることを伺うと、濵﨑部長は、「前向きで、主体的に動ける人。自分で考え、自分なりの答えを出して行動できる人」と言います。間違っても大丈夫なので、まずは自分の頭で考え、言葉にして伝えることが大事だといいます。
「そのほうがやらされ感がなくなるし、結果が出たときの面白さも違います。失敗だって成長につながりますから」
多様な価値観を持つ人が集まることで組織は強くなる、とも話していました。
「自分の長所が誰かの短所を補い、その逆もある。長所・短所をフォローし合える人間関係を築ける人と働きたい」という言葉が、とても印象に残りました。

高知支店の“雰囲気”は人によって変わる
「高知支店ってどんな雰囲気ですか?」と聞くと、少し考えてからこう話してくれました。
「一言では言えないですね。支店長が変われば雰囲気も変わりますし、部署ごとにも違います」
共通しているのは「それぞれの強みを活かす」ことを大事にする社風です。
「役員や会社の方針だけで動くというより、個性を活かせる環境を整えていると思います」と話す濵﨑部長の表情は、とても柔らかいものでした。もちろん、人間関係の良い・悪いはどんな会社にもあります。
「大事なのは、なぜ前向きに働ける人がいるのか、その背景にみんなが気づけるような環境づくりですね」という言葉には、制度だけではない働きやすさがあることを感じました。
学生に伝えたい“会社選びの視点”と“成長”の在り方
企業に入社する際には「この会社に入りたい」という気持ちだけでなく、「この会社の考え方に共感できるか」を意識してほしいと語ります。企業理念やビジョンに自分の価値観が重なっていれば、壁にぶつかったときも踏ん張れる力になるそうです。
「理念や行動規範に共感できると、しんどいときも頑張れるのです」という言葉は、会社選びの視点を少し変えてくれました。
大切にされている言葉に「仲間の成長と共に、自分も成長する」があります。成長とは、自分にとって少ししんどい目標にも挑戦することであり、それを仲間と一緒に取り組めれば、仕事はもっと面白くなるといいます。だからこそ、自分の強みや価値観を知り、会社の想いと重なる部分を見つけることが重要だと繰り返していました。
「どこに入っても『入って良かった』と思える人になってほしいですね」という最後の言葉が、とても印象的でした。

インタビューを終えて
旭食品で活躍する3名にお話をうかがい、仕事や職場に対する考え方を直接知ることができました。立場も経験年数も異なるお三方でしたが、共通していたのは「人を大切にする」という姿勢でした。
大学生の私にとって、この取材は「社会で働く」という言葉の中身を具体的にしてくれる時間となりました。働くとは、与えられた業務をこなすだけではなく、人との信頼関係を築き、自分の行動が周囲に良い影響を与えることだと実感しました。また、制度や仕組みだけではなく、日常の声かけやささやかな助け合いが、働きやすさや安心感をつくっていることにも気づかされました。
これから社会に出る私たちにとって、今回のインタビューで得た学びは大きな財産です。自分がどんな環境で、どんな人たちと働きたいのか。そのために今何を身につけるべきか。旭食品 で出会った3人の姿は、その答えを探す大きなヒントになりました。